3歳までの成長&育児が決定的に重要な理由は、この時期に人格の根底部分が形成されてしまうという事実があるからです。人格形成にとってもっとも大切なのは、心の根底に「自分は愛されている」「自分は必要な人間だ」という深い自己肯定感や肯定的世界観がしっかりと根付いているかどうかという事です。
昨今の社会問題となっている青少年による深刻な事件は、ほとんどがこれらの欠落によるものと言えます。この精神的なバックボーンが骨太であれば、子どもは成長後にどのような苦境に直面しようとも心の強さを失う事がありません。
どんな苛酷な状況でも、それでもまだ自分を信じ、他者を信じ、愛情や優しさを信じて、現状を打破しようという強い意志と希望をもって人生に立ち向かうでしょう。そのようなポジティブ思考の子どもには、現在中学・高校・大学生間に広まる「深すぎる挫折感」も「自傷行為」も「衝動的犯罪」も縁がありません。
この精神的基盤は妊娠期の胎児の時期から3歳までに、両親が(またはそれに代わる保護者が)どれだけ深く愛情を伝え心の絆作りをしたか、数多く抱きしめふれあって、また様々な状況下で赤ちゃんに対してどのような対応をしたかによって決まります。
外的刺激に対して各個人がどのような感情を抱くかは、生理学的に言えば「神経伝達物質」が大きく関与します。感情でも思考でも、何でも人の脳内の活動は「神経細胞(ニューロン)」内を電気信号として伝わり、それはシナプス結合部分でアセチルコリン・セロトニン・ノルアドレナリンなどの様々な神経伝達物質を介在し伝わることがわかっています。
どの物質が多ければ嬉しい、少なければ悲しいなどといった単純なものではありませんが、ポジティブ思考の人、ネガティブ思考の人というのはこの脳内での生化学反応に一定の習慣づけができている、と言い換えることができます。
つまり同じレベルの苦境にたった時に、「意欲・希望・自信」が沸いてくる人と、「恐怖・不安・焦燥」にかられる人との違いは、この外的刺激に対して脳内でどのような反応を示す習慣が身についているかの差であるといえます。
ヒナ鳥が生まれて初めてみたものを親だと思いこむように、3歳までに刻み込まれた思考パターンはそれがポジティブなものであれ、ネガティブなものであれ、それを変えるにはその後10年かけても足りないといわれています。
それほど0~3歳期の真っ白な心に刻みこまれる「思考パターン」「価値観」は強いものなのです。
ではどのように育てれば、「深い自己肯定感」や「肯定的世界観」といったものがわが子の心(脳)に根付くのでしょうか?親としては十分な愛情を注いでいるつもりでも、間違った育児法、間違った接し方で赤ちゃんの育児にあたると心に傷を残してしまう、ということは良くあることです。
この代表的なもののひとつに「抱きぐせ」という言葉があります。かつては「抱きぐせがつくから赤ちゃんが泣いてもあまり抱かない方がよい」という教えが育児常識となっていました。
もしこのような常識の下に育児がおこなわれればどういう事になるでしょう?「泣いても泣いても抱いてもらえない赤ちゃん」は、「どうせ泣いてもママは来てくれない。抱っこしてくれない」というあきらめと否定感を持ってしまう事になるでしょう。
そのように母親に諦めを抱いてしまった子の心には、生まれてきたこの世界そのものにもあきらめや拒絶感、拒否感が生じることになるのは当然といえます。良かれと思って何気なくとった行動が、赤ちゃんの心にネガティブな影を落としてしまったのです。
世の中の常識とは怖いものです。大人の感性をそのまま赤ちゃんにあてはめるという間違いは他にもたくさんあります。その結果、可能性あふれる赤ちゃんの才能や人格を台無しにしてしまっている例はあまりにも多いのです。