脳の性差を理解して、子ども社会性の発達を促す方法について

No.142更新日付:2023年8月7日
子どもの成長を願うお母さんから、よく「社会性のある子どもになってほしい」というお話を聞きます。国際化の進む世界で、適切な人間関係や環境への適応をおこなえるようになるように子どもに願うのは当然のことですよね。
コラムNo.67「子どもの社会性を育てるために幼児期にできること」では、「社会性」の定義や、乳幼児期に子どもの社会性を育てるための基本的な注意点についてご説明いたしました。また、コラムNo.73「子どもの社会性を育てるために家庭でできること」では、一歩進んで各家庭でできる具体的な取り組みについて解説いたしました。
こちらのコラムでは、さらに子どもの性別で異なる社会性の発達にスポットライトを当てつつ、子どもの社会性の発達を促す方法についてご説明いたします。よかったら上述のコラムとあわせて読んでみてくださいね。
上述の、コラムNo.67「子どもの社会性を育てるために幼児期にできること」でもご説明したおとおり、「仲間から好意を受けたい、仲間として認められたい」という遺伝子に刻み込まれた強い欲求が、社会性やコミュニケーション能力を育てるための原動力になります。
この「仲間になりたい」という本能を生かし育てるために、まず親がすべきことは愛着・アタッチメントの形成ですが、それについては別の部(コラムNo72.「子育て成功の最優先ポイントは【愛着形成】~愛してるよの声かけと抱きしめの絶大な効果~」)で解説しているため、ここでは割愛いたします。
社会性を育てるために大切なことは、まずは「人見知り」の能力を育てることです。自分にとって親しい人、親しくない人、知っている人、知らない人、自分に好意的な人、敵意を抱いている人など、数多くの人と接すれば接するほど、相手との距離感を測る感性が鋭敏になり、距離感の尺度も細かく細分化されます。
この尺度の細分化が未熟だと、他人に対するカテゴリーが「かなり親しい」「親しい」「親しくない」程度の大雑把なものにしかならないために、「親しくない」に分類された相手にはまったく興味・感心を抱かなくなり、相手のことを、人間ではなく自分とは関係のないモノと同じにしか感じなくなることが多いです。
例えば人に対して、モノを盗んだり、ひどい怪我を負わせたり、強盗殺人を犯したり、という時の犯人の心理は、大抵「被害者」が血の通った人間ではなく「自分と関係のない物体」になってしまっているといえるでしょう。
相手にも家族がいて、生活があって、一生懸命生きているのだ、と詳細にイメージできるだけの想像力が本当に豊かに育っていたら、相手を傷つけたりできません。
そのようなイメージ力や距離感の鋭敏な感性を育てず、ただただ「暴力はいけない」「ケンカしてはいけない」「盗んではいけない」などと強制しても、心に染みこむ深い理解は決して育たないのです。
自分ではわかっているつもりになっていますが、それはTVドラマやゲームを通してのバーチャルな経験でしかなく、本当に本物の人間との交際で培われる複雑な対人感情や相手への高度な心情理解ではないのです。
子どもに限らず大人でも、人付き合いが苦手だという人は、この距離感の感性を発達させることが大切です。それには多くの人と会話し、相手に心を開く経験を重ねる事が一番です。
また、子どもの社会性発達はお母さまの対人能力にかなり左右されます。子どもを幼いうちからクラス人数の多い習いごとに通わせるよりも、お母さまご自身が友達と会うことを楽しんだり、一緒に出かけたりする機会が多い方が社会性の発達は進みます。
そして、いろいろな公園や地区センターなどに積極的に足を運び、初めて会った人とも親しく話す姿の見本を親が見せてあげる事が最も効果的です。それには、いきなり話しかけるのではなく、お子さんと一緒にしばらく公園などでのんびり過ごしていると、子どもがきっかけになって相手と目が合う機会がきっと訪れます。そこから会話の糸口を見つけてみましょう。
そして、子どもの社会性発達を考える時、知っておきたいのが男女の脳の性差です。「男らしさ・女らしさ」ということを否定する教育者も一部いますが、男女平等が重要なのは権利や義務においての話であるべきです。
もちろん例外は常に存在することが前提ですが、男の子と女の子では脳の設定からして違っているのです。脳の神経細胞にはシナプス回路を作るためのスパインというトゲがありますが、男女ではこのスパインのでき方も違うし、脳皮質の薄いところや厚いところも違います。
専門家ならば脳を見ただけでそれが男性か女性かわかるほどです。そのため、お母さんや女の子の脳にとっては当たり前に感じる事が、男の子にはまったく理解できなかったり、お母さんが「正しい」と感じる事を男の子に強制することは、男の子の自然な成長にとって弊害になる事もあります。
それではここで、男の子・女の子の脳の特性をご紹介いたします。
女の子は、左右の脳を同時に使う傾向があります。それにより、常に周囲の状況変化に敏感で、相手の感情を理解することが得意なので、一人で遊ぶよりも家族や友達と遊ぶことを好みます。お母さんのお手伝いや小さい子の世話も好きです。また、人の意見に左右されやすいところがあります。
男の子は、右と左の脳をそれぞれ別に使う傾向があります。それにより、何かに夢中になっていると、呼ばれてもまったく気付かないことがあります。女性には考えられない事ですが、男の子に悪気はまったくなくお母さんの声に本当に気付かないのであって、無視をしているわけではありません。
また、勝負の勝ち負けにこだわりやすく、好きな事には非常に詳しくなったりします。この好きなことに集中している時は主に一人で取り組みたがります。オモチャやブロックなど並べている時は自分が集めたものでシステム構造や世界観を作っているのです。
また、集中力が高い割には、新しいことが目に飛び込んでくるとそちらに夢中になって今までやっていたことを忘れてしまったりします。
そのため、お母さんからの愛情を伝える時も、社会性を育ててあげたいと考える時も、この男の子の特徴を認め、つぶさないことが非常に大切です。公園などでは、男の子の行動は極力否定せずにやりたいようにさせてあげられるよう努めましょう。
そのためにはお母さんがいつでも息子さんを危険から守り、友達とのトラブルを未然に防げる距離について歩いてあげることが大切です。なお、女の子のお母さんは公園での男の子達の動きを理解してあげて、上手にお子さんと仲良くさせてあげてください。
最後に、社会性の発達につながる、子どもの「仲間になりたい」という大切な本能を鍛錬する具体的課題をご紹介します。
人間関係に喜びを見いだす力が育ちます。
そこでできるだけ、初めて出会った人とにこやかに話す姿をお子さんに見せましょう。
食事やおやつを食卓で家族に取り分ける姿を見せたり、一緒におままごとをして何でも仲良く半分こに分ける遊びをたくさんしましょう。
本の一例を挙げれば、
「おんなじ おんなじ」
「だるまちゃんとてんぐちゃん」
「もりのおふろ」
「ぞうくんのさんぽ」
「ともだちいっぱい」
などがよいでしょう。
図書館でいろいろ探してみるなどして楽しんでみてください。
いかがでしたでしょうか?
これまでのコラムでもお伝えしてきましたが、子どもの社会性の発達のためには、まずは子ども自身の欲求や特性を親が認めてあげることがすべての出発点です。
性差による考え方や発想の違いもそうですし、自らの欲求を認めてもらえたことで、初めて他人との距離感が見えてくるものです。そのような経験を積むことで、子どもは徐々に欲求や特性が相対的なものであることを知り、学んでいくのです。
子どもの特性を理解したうえで、うまく子どもを導いてあげてくださいね。
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カテゴリ>1歳~3歳の育児