「人見知り」を生かして子どもの恐怖心を克服させてあげよう

No.49更新日付:2024年6月5日

早ければ生後6か月くらいから始まるともいわれる子どもの「人見知り」。それは決してネガティブなことではなく、子どもの順調な成長の証といえます。ここでは、「人見知り」の特性を生かして、「恐怖心を克服する」という成功経験を子どもにたくさん与えることにフォーカスして、その方法を説明していきます。

また、「人見知り」を使って子どもの恐怖心を克服させるにあたって、同じタイミングで教えておくべきアイコンタクトの重要性についても掲載しています。

「勇気」とは何か?

「恐怖心の克服」は、あらゆる動物の中でも人間にだけ与えられた素晴らしい力です。動物が危険に飛び込む時は、子どもの命を守る時や、背後からもっと大きな危険や恐怖に追い立てられた時のみです。大抵の場合、生き物は恐怖を感じるとそこから逃げ出そう、逃避しようという本能をもっています。

人間だけが恐怖心を克服することができる

しかし人間だけがその恐怖を克服する方法があるか理性的に考え、勝機を見出せる場合には可能性に賭けて、あえて危険に飛びこんでいくという行動を選択することが可能です。この困難や危険に立ち向かう、強い心の力のことを「勇気」と呼ぶのではないでしょうか。

子どもに「勇気」を教えない風潮

幼い子どもが恐怖感・恐怖心を克服する方法には、まず身体能力面・運動面でのアプローチが考えられます。思いきって吊り橋を渡ってみる、木に登ってみるなどですね。けれどもあまりに大きな恐怖は、大人の目から見ても「そんなことまでしなくても」という否定的意見を生み出しやすく、それが高じて結果的に小さな度胸体験までも否定してしまう風潮が蔓延しているといわれています。

そして「気が弱くても、勇気がなくても、心が優しければそれでいい」といった、困難からの逃避を擁護する意見が尊重される空気が育ちます。勇気が出せず、困難から逃げ出してばかりでも、心が優しければ本当にそれでいいのでしょうか。

「人見知り」を利用して、子どもに恐怖心の克服を教えてあげられる

子どもが危険を感じるような身体面の恐怖を与えずとも、人見知りによる恐怖心をうまく活用すれば恐怖の克服経験を豊富に与えてあげることができます。子どもは自分にとって友好的・好意的な人物に対してでも小さな恐怖心を感じてくれるのですから、恐怖感克服の学びとして、これほど安全なアプローチはありません。

はじめてのお友達に公園で会った時、親戚のおじさんにはじめて会った時、恐れずに遊ぼうと声をかける、自己紹介をする、その一つ一つの「勇気」が子どもに恐怖心の克服の成功体験をもたらしてくれます。まさに、「人見知り」こそ成長のチャンス、子どもの人見知りが始まったらそれはさらに精神的に成熟していくための好機だと親が捉えることが大切ですね。

優れたアイコンタクト能力がもたらしてくれるもの

昔から「目は口ほどにモノを言い」と言われるように、目には本当の気持ちや感情が現れやすいものです。困難から逃げ出さず立ち向かう勇気・他人に対して自分の心をオープンにする勇気と、目に宿る力・瞳の輝きには密接な関係があると言えるでしょう。

アイコンタクトは相手との心の距離を縮め、互いに信頼を積み重ねていくための最も優れた方法の一つとされています。アイコンタクトテクニックが優れていれば、他人と心の距離を縮めることが上手になります。言葉の通じない相手の警戒心を解くことも、逆に警戒心を抱かせることも自由自在です。

もっとも、文化的な生活環境においては遭遇しにくいですが時には相手を萎縮させて、自分がイニシアチブを取ることも可能です。そのためには、相手の目をしっかりと見ながら話すことが効果的です。逆にその場であまり目立ちたくない場合には、極力相手の目を見ないようにして話す方がうまくいくものです。

そして、「相手の目を見るも見ないも自由自在にコントロールできる」のと、「相手の目を見たくても見ることができない」のとでは、まるで意味が違います。集団の中でイニシアチブを取ったり、リーダーの役割を務めたりすることは少しも悪いことではありません。

自分よりも能力が高い相手の前に出ると、人は少なからず萎縮してしまうものですが、力のある方がアイコンタクト能力に長けていれば、相手を萎縮させすぎずに、好感度を高めつつ距離感を縮めていくことも可能になります。

社会性が豊かであれば、自分より能力の高い相手の前でも、心は臆しません。その集団の中での自分の立ち位置をわきまえながらも、堂々とありのままの自然体の自分を見せることができるものです。そして、その心の強さは目の輝きに現れます。

相手の目を見て話すべき?

幼い頃からアイコンタクトの能力が育てられた子どもは社会性が豊かに育ち、たくさんの友人や先輩に囲まれて楽しい時間を過ごす可能性が高まると言われています。

アイコンタクトの能力の育て方

子どものアイコンタクトの能力を発達させる方法の一つは「相手の目を見て話す習慣を身に付けてあげること」です。しかし、「目を見て話す」という事について最近は賛否両論あります。現在、書店の心理学コーナーにある本には「相手の目を見て話すべき」という本たちと「あまり相手の目を見て話すべきではない」という本たちの真二つに分かれます。

このように正反対の論調が存在するのは、その相手と自分との「現在の関係」を考慮していないからだと考えます。『密接距離』関係にある相手と、『社会距離』関係にある相手とでは、目を見つめて話された時に受ける印象はまるで違います。相手の目を見て話すことと、アイコンタクトが相手に与える影響をパーソナルスペース理論に当てはめて考えてみると、人の心理をより一層理解しやすくなり、実際の人間関係に活用もしやすくなります。

※パーソナルスペースについては、コラムNo.44「赤ちゃんの後追いと人見知りの対処法」に詳細掲載されていますので、ぜひ併せて参照してみてください。

パーソナルスペース別のアイコンタクトの役割の違い

まず、『密接距離』にある相手には溢れんばかりの好意を抱いているのですから、どれだけ相手の目を見つめていても平気です。そのため親子間では何の抵抗もなく、何時間でも見つめ続けていられるはずです。

これが『個体距離』の関係になりますと、最初は抵抗なく目線を合わせて話すことができます。しかし、話の内容について知識や経験が多く、相手よりも多くの情報をわかりやすく論理的に話せる人の方が次第にその場のイニシアチブを握っていきます。

こうなると、立場が強い方は相手を見つめることにまったく抵抗はなくなりますが、立場が弱い方は、2つの反応に分かれます。相手を尊敬し自分のリーダーとして受け入れた時には相手をまっすぐに見つめることができますが、受け入れきれていない時には威圧感から逃れるように目線を合わせなくなります。

『社会距離』にある相手とのアイコンタクトは正に飛び道具です。さほど親しくない相手に対して、「あなたとコミュニケーションを図りたい」というサインをもっとも簡単に、さりげなく送ることができます。アイコンタクトを送られたら、送り主とコミュニケーションを図ってみようと思えば相手を見つめ返してみますし、その気がなければ視線を外してその場を離れがちになるものです。

『個体距離』同様、会話を続けるうちに力関係が生じてきますが、まださほど親しい間柄ではないのですから一応表面上は対等な関係が維持されます。『社会距離』の相手と会話する時には、目をじっと見つめるよりも、相手の口元や下まつ毛の辺りなど、目からわずかに離れた辺りをみると、お互いに緊張を感じたり、相手に威圧感を与えたりすることなく会話ができます。

そして、興味深い話題や知らない言葉が登場した時などにピンポイントで相手の目を見るとよいでしょう。相手の目を見つめて話す時間が会話時間全体の2割くらいが適量だと考えられています。

『社会距離』関係の相手にはあまりに長く見つめられていると威圧されたり、気恥ずかしさを感じたりと、マイナスの感情が沸き起こるようです。そのため、目を見つめて話し続けても心理的抵抗をあまり感じなくなってきたら、その相手とのパーソナルスペース距離がうまく縮まっている証です。

やはり相手の目を見て話すべき

そして相手に対して心理的に有利か対等の立場、または親しみや尊敬の念を抱いていれば、相手から目を逸らすことはなくなります。つまりは、人と話す時にはやはり基本的には「相手の目を見て話すべき」といえます。相手の目をまっすぐ見つめて話すことは、自分よりも能力の高い相手とでも、心をつなぐ架け橋にすることができるからです。また、自分の方が優位だと感じた時には相手を萎縮させないように敢えて目線を適度に外しながら、距離感を縮めていくこともできるようになります。

恐怖心克服の成功体験をたくさんプレゼントしよう

子どもと向き合って真剣に話すとき、常に目を見つめながら話すことを心がけてあげますと、お子どもも自然に「人と話す時には目を合わせる」とう習慣を身につけていきます。これができる子どもは、社会距離関係の相手が個体距離へ入ってきた時にもジッと相手の目を見つめようとします。そしてその相手の目や表情から好意を感じ取った時には警戒心を解いて心を開くことを覚えます。

この時に子どもは自分の意志で小さな恐怖を克服したのです。人見知りによって泣き出してしまった相手とでも仲よくなれ、最初に抱いた恐怖を乗り越え感じなくなるという成功経験は、お子さまの記憶には残らずとも脳のどこかに必ず残り、「困難は克服できるもの」という無意識・無条件に信じる概念の一つを形成していくでしょう。

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