母乳育児は難しくない②~母乳育児のコツを学ぼう~

No.114更新日付:2024年4月9日

「母乳育児」と聞くと、皆さまはどのような印象を持つでしょうか? 「大切なこと」だとは感じつつも、なかなかおっぱいが出ない、子どもが飲んでくれない、夜中の授乳が大変など、「つらい」という感情をお持ちの方も多いと思います。

ですが、この「つらい」の原因になっている感情は、実は本当は悩む必要のないことで悩んでしまっていることが多いのです。

前回のコラムNo.113「母乳育児は難しくない①~赤ちゃんにとっては母乳育児が一番!~」では、母乳育児のメリットや正しい知識についてまとめています。今回は、主に母乳育児をしていくなかで出てくるお悩みについて、その対処法やコツをまとめています。あわせて参考にしてみてくださいね。

母乳育児のお悩み①:母乳が出ない、足りない

大手育児用品メーカーやリサーチ専門会社の調査で、母乳育児についてもっとも多いお悩みが「母乳が出ない」「量が足りない」というものです。これは、世の中や医療関係者の認識自体が間違っていることが要因として挙げられます。

生後1か月はほとんど母乳が出ないほうが自然

生後1ヵ月はほとんど母乳分泌がないほうが自然なのです。赤ちゃんも1日20時間以上は眠っていますから、起きたらとにかく乳頭をくわえさせてみましょう。飲めても飲めなくてもいいので片方5分ずつ吸わせます。飲ませようと思わず、赤ちゃんにとってはあごや舌の使い方の練習、お母さまにとっては脳に赤ちゃんの行動をインプットし、プロラクチンとオキシトシンの分泌システムを作るための時間です。

お母さんの脳の中に「催乳反射」という条件反射を作りあげないと母乳育児は絶対に軌道にのりません。完成するには産後母児同室で頻回に乳頭を加えさせていたとしても平均3ヵ月はかかります。産院で赤ちゃんと過ごせる時間が少なかった方はそれ以上かかると考えられます。

母乳が出ない最初の期間に搾乳しておくと出るようになる

そしてこのほとんど母乳が出ない1ヵ月間に、お母さんに1つだけ頑張ってほしいのが搾乳です。赤ちゃんが飲めなくてもとにかく乳頭を含ませたあとで、手で搾乳しておいてほしいのです。

一般的な搾乳器は母乳分泌のシステムを考慮しているものは少なく、乳腺を痛める危険性が高いですし、搾乳器でお乳が出てもお母さんの自然母乳分泌の能力が発達するとは考えにくいので使用すべきではないと思います。

搾乳といっても最初のうちは1~2時間かけて5cc(小さじ1杯程度)でよいのです。1滴も出ないという方にとって1時間も搾乳するのは苦痛なだけですから、1回3~5分程度搾乳に挑戦することを1~2時間に1回くらい試してみます。

5cc出るようになったら次は10ccと、少しずつ目標の量を増やしていき、30ccも出るようになったらもう母乳不足を心配する必要はありません。30cc出るならば、搾乳するよりも赤ちゃんが自分で飲む時の方が遥かに多くの母乳が出ています。搾乳というのは、本当になかなかお乳が出ないものなのです。

母乳育児のお悩み②:母乳が足りているのかわからない

次に多いお悩みが「母乳が足りているかわからない」というものです。数多くの経験豊かなベテラン小児科医が口をそろえておっしゃることは「排泄があり、1ヵ月ごとに体重が増えていれば問題ない」ということです。また、毎月子どもの身長・体重のデータをとってみると、時折3ヵ月くらい体重がほぼ増えない時期が定期的に続くかもしれません。

しかしその分、決まって身長が非常に伸びていたりします。ですから生後9ヵ月以降身長が伸びている時には体重は増えなくても心配はいらないと感じます。

母乳が足りているかの目安としては、「自分で搾乳すると30cc以上の母乳が出る」「排泄がきちんと出て、排便も3日に1度以上」「1ヵ月間に体重または身長が少しでも増えている」という3つの条件に当てはまれば、母乳不足は一切心配しなくてよいと考えます。

母乳育児のお悩み③:乳頭のトラブル

また、「乳首が切れる」「陥没や扁平など乳頭の形が気になる」のも多くのお母さんがお悩みとしてあげられます。これらの原因の一つとして、赤ちゃんが乳輪部まで口に含んでいない可能性があります。

赤ちゃんに乳輪部まで口の中に含ませるようにする

授乳経験のない人のほとんどは乳首の形状からイメージして、赤ちゃんは乳首を吸っていると思いがちですが実はまったく違います。赤ちゃんは両あごで乳輪部を圧迫してポンプのようにお乳を絞り出しているのです。つまり赤ちゃんに乳首だけを含ませてしまうと乳首周辺が切れて裂傷を起こす原因になります。

赤ちゃんの吸い付き方がまだ上手でなかったり、搾乳の方法が間違っていたりすると切れやすくなります。また、最初の子どもの頃にはお母さんの皮膚がまだ非常に柔らかいので、わずかな刺激でも切れやすく、必ず乳輪部まで口の中に含ませるように意識したいものです。

そして、乳輪部まできちんと含めば乳頭の形が扁平や陥没タイプでもあまり関係ないのです。

本当に重度の真性の先天性陥没の人はごくごくわずかしかいません。ほとんどの人は適度な刺激を与え続けていれば母乳育児が可能になる仮性陥没です。乳頭よりもむしろ乳輪部を柔らかくするようにし、授乳を利用してマッサージを継続すると次第に楽になってきます。

母乳が出る仕組みについて少しご説明しましょう。ごくわずかな母乳のしずくを分泌する乳腺胞が100個近くブドウの房のように集まっており、これを小葉と呼びます。そして小葉が40個近く集まって乳腺葉を形成しています。乳腺胞にたまったわずかなしずくは少しずつ集まって乳管を通り、やがて乳管洞に溜まります。乳頭、つまり乳首の先には十数個の乳口(乳腺の出口)があります。そしてこれまでは乳管洞を圧迫すると母乳があふれ出る仕組みだといわれていました。

しかし、実は最新の研究によると、乳管洞という部分は存在せず、乳腺胞以外にお乳が溜まる部分はないと言われています。乳腺の構造も赤ちゃんが母乳を飲む仕組みも、実はすべて仮説であり、まだまだ医学界でも明らかになったと「考えられている」に過ぎません。ですから現役の母親が実感した感覚の方が真実にせまっているのではないかという気もします。

母乳育児のお悩み④:急に胸が張らなくなった

さて、ここからは非常に重要なお話です。

胸が張らないと感じる時こそ母乳育児成功のサイン

多くの人が母乳育児を諦めて混合にしてしまうきっかけとなる出来事が、子どもが生後3~4ヵ月の頃にそれまではよく出ていたお乳が、なんだか急に出なくなったような気がし始めることです。これは母乳が出なくなったのではなく、うまく母乳育児が軌道に乗ったお母さんは、この時期に胸が張る感覚が急激になくなってくるからなのです。実はこれこそが、母乳育児成功のサインなのです。

「催乳反射」が完成すると、お母さんの脳はわが子がお乳を欲しがる泣き方や仕草を読み取り、新鮮なおっぱいが豊かに湧くようになります。

射乳の仕組みは、生体科学上では男性の射精の仕組みに似ていると言われています。思春期前の男の子は女の子の体を見ても何も感じませんが、思春期になると性的な衝動を感じるようになります。そして、書物や映像などで様々な知識を取得していくと、今度は直接的な女性の体以外のことからも、様々な連想を関連づけて性的衝動を誘発することができるようになります。脳の中に刺激とホルモン分泌のシステム関係ができ上がったからです。

「催乳反射」が完成すると、子どもが欲しがった時だけ必要なお乳が出る状態に

射乳の仕組みも少し似ており、これまではわが子がお乳を欲しがるサインをお母さまの脳が認識していなかったのが、催乳反射が完成すると泣き声や甘え声、目つき顔つき、腕の動きや仕草といったサインからお母さまの脳は赤ちゃんがおっぱいを欲しがっていると知り、プロラクチンが分泌されて母乳が作られ、オキシトシンによって乳頭に運ばれるのです。

これまでは時間経過によってたまった少し古いおっぱいを飲ませるしかなく、あまり飲んでくれなければ自分で絞って捨てなければ乳腺炎の心配もあったのが、これからはあまり張らずに、欲しがった時だけ新鮮なお乳が必要量だけ湧き出るという、超!高機能おっぱいに進化したのです。

おっぱいが出なくなったと勘違いしないことが大切

この当たり前の仕組みを現在知っている人は非常に少なくなり、ほとんどの人はこの時期に「出が悪くなった」と言って粉ミルクを与えてしまうのです。お乳は赤ちゃんが前回飲んだ量を参考に作られますから、ミルクのせいで母乳の飲みが少なければ、作られる母乳の量も減っていきます。

急におっぱいが張らなくなってきても心配せず、むしろ催乳システムの完成を喜びましょう。現代の医学ではプロラクチンは乳頭への直接的な刺激がないと分泌されないといわれていますが、上記の経験をすれば精神的刺激も関係あると思わざるをえません。この分野もさらなる研究が進んでほしいものです。

母乳育児を成功させるための身長体重の測り方と心構え

これまでの内容をふくめ、母乳育児を成功させるために子どもの身長と体重を1ヵ月ごとに測ってみましょう。

体重か身長のどちらかが増え、排泄があるならば栄養不足を心配することはやめましょう。身長はメジャーを使って、寝た姿勢や壁際に立ったときに素早く床や壁にしるしをつけます。ビニールテープなどを短く切って用意しておくと簡単です。あとからゆっくり測りましょう。

体重は50g単位で測れる体重計が自宅にあればいつでもすぐに測れます。生後1ヵ月でも寝て測れるようなものが最適でしょう。

つい1週間ごとにでも測りたくなってしまいますが、できればそれは避けた方がよいです。生後9ヵ月までの子どもの体重は、運動量によって大きく変動します。目先の数字で一喜一憂してしまわないようにしましょう。

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